レジェンダリードラマー、カーマイン・アピス率いるキング・コブラの約10年ぶりとなる7作目のスタジオ・アルバム『WE ARE WARRIORS』が、今年8月に海外でリリースされた。
カーマイン・アピスと言えば、60年代から活躍するもうベテラン中のベテランであり、古くはカクタス、数々の名曲を残したヴァニラ・ファッジ、あのジェフ・ベックと共に73年に初来日したベック・ボガード&アピス、AOR系のKGB,と渡り歩き、同じくベテランのキャリアを持つロッド・スチュワートのバンドや、トミー・アルドリッジの代わりにオジー・オズボーン・バンドのツアーに参加。
ソロアルバム制作等、精力的な活動を続け、1984年に無名でルックスの良い若きミュージシャンを集めキング・コブラを結成。その後はジョン・サイクスとブルーマーダーを組むなど、カーマインの音楽的功績は神々しく、歴史に残るドラマーの一人である。
そんなカーマインが今回の新生キング・コブラとしてリリースしたニュー・アルバムでヴォーカルを務めるのが、当時「LAメタル最後の切り札」と呼ばれた元ラフ・カットのポール・ショーティノである。
ラフ・カット時代にポールはロニー・ジェイムス・ディオの呼びかけで集まったアフリカ飢餓救済チャリティープロジェクト、「Hear ‘n Aid」に参加、ロックモキュメンタリーコメディ映画「This Is Spinal Tap」でDuke Fame役を務め、バンド解散後はケヴィン・ダブロウの脱退に伴い、クワイエット・ライオットに加入。2010年にはキング・コブラのフロントマンとして抜擢され、彼にとってキング・コブラ再結成から今作が3作目の作品となる。
10月18日にルビコン・ミュージックより発売された国内盤を期して、ラスベガスでポール・ショーティにバンドのことや自身の近況を語ってもらう機会に恵まれた。
●日本でもようやくキング・コブラの7作目のスタジオ・アルバム『WE ARE WARRIORS』の日本盤(ボーナストラックつき)がリリースされましたが、またラインアップの変更がありましたね。
ポール・ショーティノ(以下PS): ヴォーカル以外のオリジナル・メンバーが揃ったラインアップではなくなったね。ミック・スウェイダはブレット・ボーイズに戻ったよ。デヴィッド・ヘンザーリング(デヴィッド・マイケル-フィリップス)もアルバムには参加していない。
ベースのジョニー・ロッドは残って、ギターはカルロス・カヴァーゾとローワン・ロバートソンが加入し、アルバムでも弾いている。俺もプロデュースにはかなり関わっているんだ。
キッスやリッチー・ブラックモア、Mr.ビッグなどを手掛けたパット・レーガンがミキシングを請け負ったんだけど、彼にも多数の賢いアイディアがあって、ミキシングの観点だけではなく、プロデュースにも貢献してくれた。だから共同プロデュースのクレジットになっているよ。
●ローワン・ロバートソンはアルバムには参加しているのに、7月に公開された「We Are Warriors」のミュージック・ビデオに 彼がいないのは何故ですか?
PS: そう。実はローワンが脱退してしまってね。理由ははっきりわからないけど、別のプロジェクトの関係かもしれない。代わりにタヴァス・スタンリーというラスベガス出身だけど、カナダのバンド、アート・オブ・ダイイングのメンバーがビデオに加わてくれた。
●曲作りやレコーディングはどのようなプロセスで行われたんですか?
PS: もうこの時代、もうスタジオに入って何週間もレコーディングしなくてもいいんだ。みんなホーム・スタジオを持っていて、それぞれがアイディアを持ち込んで、データファイルのやりとりをする。
テクノロジーはとても便利だが、それをまとめ、ミキシングすることに膨大な時間を費やすね。結局リリースするまでに1年半もかかった。今年の4月に完成したばかりだよ。
ローワンは俺のスタジオに来て、俺のアイディアを彼のやりかたでいろいろとプレイしてくれた。個人的にはとても紳士的で謙虚、美しい人間性だから、続けてほしかったけれどね。カルロスはクワイエット・ライオットやラフ・ライオットでも一緒にやっていた旧知の仲だし、とても気が合うんだ。彼のプレイは安心して任せられる。今回は4曲も作ってきた。ジョニー・ロッドは相変わらずエネルギッシュで、パワフルだね。カーマインはあの通り、プロフェッショナルで安定したプレイヤーなので、早くこのバンドでツアーができることを望んでいるよ。
●「We Are Warriors」にはロック・アンセムと言うか、気になるフレーズが歌詞に出てくるのですが・・・。。
PS: 気づいたかね。あの曲はね、曲を作ったのはカルロスだけれど、俺が歌詞を書いた。俺たちがまだ若かったころ、レコード契約が取れるまでの、80年代のサンセット・ストリップ時代の思い出を歌にしたんだよ。
歌詞の中にに「Come Feel The Noise…Bang Your Head…Slick Black Cadillac, Wild And Young…Keep Me Hanging On…Hot Legs」など、それぞれのメンバーが在籍していたバンドの歌からとったロックのクルシェ(決まり台詞)みたいな言葉を盛り込んだんだ。
まあ、ちょっとしたおふざけってところかな。いや、彼らはその時代に成功していたわけだし、彼らに対する称賛の意を込めてね。ラフ・カットはどちらかと言えば、カルト的なポジションだった。契約してもプロデューサーのスケジュール待ちでなかなかレコーディングができなかったんで、LAメタルが一番波に取っている時期に出遅れてしまった。
●あなたが加入したことによって初期のキング・コブラとはひと味違うサウンドになって、もちろん、初期からは時代も変わりましたが、よりブルージーなハードロックバンドになった言えますよね。
PS: ブルース・ロックは俺のルーツだからね。俺が歌えばそうなるね。でも素晴らしいプレイヤーたちが味付けしてくれたおかげだ。カルロスが書いた曲で唸るようなディストーションで攻めたり、しっとりとしたラヴ・バラードもあるけど、基本的には80sロックと言えるんじゃないかな。
●ナザレスの「Love Hurts」のカバーもあなたの声にマッチしてお見事です。
PS: カーマインと俺のアイディアでこの曲をやろうって決めたんだね。昔から好きな曲だね。真ん中のクリーンなソロはローワンで、終わりの方のディストーション・ソロはカルロスによるものだ。
●キング・コブラとしてツアーの予定はあるのですか?
PS: それが・・・健康の問題でカーマインはアメリカ国外でツアーはできないんだ。異国で何かあったら命にかかわるような問題になるのは危険だからね。長いツアーはしないだろう。フェスティバルに出演するとかかもしれない。
だからもしコング・コブラとして日本公演をやることになったら、ドラマーの代打を探さなくてはならないね。その時は弟のヴィニー・アピスに頼むって言っていたよ。もしそうなったら、同じ名字だから許してやってくれ(笑)。
●あなたは2016年に黄金期のメンバーでラフ・カットを再結成させましたが、デイヴ・アルフォードとクリス・ヘイガーと分裂した形になりましたね。その後の活動はカルロス・カヴァーゾをゲストに迎えたラインアップで ”ラフ・ライオット”になっていましたね。結局そちらの方の活動はどうなったのでしょうか。
PS: 最初は再結成に対してみんないい感じだった。何回かライヴもやったのだけど、マネージャーとして再びウェンディ・ディオが関わることになって、これから本格的な活動を始めようとしていた時に状況が変わったんだ。
まず、ギターのクリス・ヘイガーとドラムのデイヴ・アルフォードが個人的な問題によって脱退した。彼らとは意見が合わなかったんだ。ラフ・カットというバンド名は俺が考えたんだ。バート・レイノルズの映画『Rough Cut』からつけたんだよ。
だけど2人はそのままコンサート会場でラフ・カットの名前を使い続け、グッズも販売していた。その権利に同意しなかったから弁護士を通しての話し合いとなってね。
ギターのアミア・デラクがが「ポールがラフ・カットの声だし、クリスとでデイヴがラフ・カットの名前を使うのはおかしい。ファンを騙している」と言っていたように、宣伝用に昔のラインアップの写真も使ったりしていたからね。それは明らかに欺瞞に満ちているね。
それからアミアはジュリアンKという彼のバンドのツアーが始まるということになって、活動を継続できなくなってしまったから、カルロス・カヴァーゾを誘ったんだ。その後にベースのマット・ソーアが脱退したので、ショーン・マクナブが加入した。ドラマーはホワイト・ライオンにいたショーン・マクナブでね。マットはスタジオの仕事をしている方が好きなんだ。『ラフ・カットIII』でミキシングも担当したんだ。
それでどうせならバンド名を変えようと思ったんだ。で、これはもうラフ・ライオットじゃないか?って話が出たんだが、じわじわとそのネーミングが気に入ってね。
●以前ラスベガスで何年も続けていた「Raiding the Rock Vault」のショーから離れたのはどうしてですか?
PS: 体制が変わってしまってね。もちろん、一緒にやってきたメンバーには敬意を払うよ。でももうそれまでとは感じが違ってきた。だったらもっと面白いショーをやろうと思って、昨年12月から新たなるショー「The Icons Of Classic Rock」を始めたんだ。
メンバーはロマンティックスのウォーリー・パーマー、サバイバーのデイヴ・ビックラー、フォーリナーのジョニー・エドワーズ、ボン・スコットの前にAC/DCのヴォーカリストだったデイヴ・エヴァンス、ボストンのフラン・コズモ、サンタナのアレックス・リガートウッド、そして俺の7人のヴォーカリストという構成であちこちツアーしている。南米ではアリーナ級の会場でもやった。スペインやイタリアなどでも公演を予定している。
「Raiding the Rock Vault」はすべてカバー曲だったけど、このショーはシンガーたちが在籍していたバンドのオリジナル曲のみだ。素晴らしいショーだよ。でも3時間もやる。シンガーの人数が多いから、俺の持ち歌は4曲。「Cum On Feel The Noize」(クワイエット・ライオット)で始まり、「Dreaming Again」(ラフ・カット)、「Don’t Wanna Be Your Fool」と「Metal Health」(共にクワイエット・ライオット)だ。これから「The Icons Of Classic Rock」のコミック・ブックも出そうと思っているんだ。
●ロック・コミックですか?
PS: ああ、そうだ。クールだろ?マーベル・コミックからワールドワイドで発売される。
●キッスなどもマーベル・コミックを出していましたが、あんな感じですか?
PS: まさにそうだね。もう絵は出来上がっている。発売日などはまだ決定していないけど、もう契約は交わした。お楽しみだよ。
●今後の活動はどんな予定ですか?
PS: 俺個人の話になるけれど・・・最近はラスベガスのフレンチ・レストランで俺は週に2回ほどソロのアコースティック・ライヴを行っているんだ。歌うことは声を維持するために歌い続けることは大切だからね。クワイエット・ライオット、ラフ・カット、ビリー・ジョエルのカバーなど、ブレイクなしで3時間ぶっ続けで歌っている。
コロナ自粛中でもいろいろな活動はしていたんだよ。1994年に日本のみでCD化されていたバッド・ボーイズのレアトラック・アルバムをリマスターして、ボーナス・トラックを3曲加えて2021年に再発売したんだ。
同年にラフ・カットの3枚目『ラフ・カットIII』もリリースして、さらにディオのギタリストだったトレイシー・Gとブルー・ダリアってプロジェクトを組んでアルバムを出した。ドラムはヴィニー・アピスだ。ブルージーでハード&ヘヴィだし、まるでゲイリー・ムーア・ミーツ・レッド・ツェッペリンの如く、ダイナミックなクラシック・ロック・アルバムに仕上がっているよ。
そして、これから今まで俺がレコーディングしてきたお気に入りの曲とカバーソングをレコーディングしようと計画中なんだ。
あとはいつも通り、保護犬活動をしている(笑)。日本にまた行きたいよ。日本のファンにも会いたいし、甥っ子が日本に住んでいるんでね。
(取材&インタビュー:Ginger Suzuki)
KING KOBRA / We Are Warriors (RBNCD-1380)
Tracklist :
1.Music Is A Piece Of Art
2.Turn Up The Music
3.Secrets And Lies
4.Drownin’
5.One More Night
6.Love Hurts (Nazareth hits/Everley Brothers cover )
7.Dance
8.Darkness
9.We Are Warriors
10.Drive Like Lightning
11.Trouble(Bonus track)
12.Side By Side(Bonus track)
KING KOBRA:
Paul Shortino ポール・ショーティノ:Lead Vocals
Carlos Cavazo カルロス・カヴァーゾ :Guitar
Rowan Robertson ローワン・ロバートソン:Guitar
Johnny Rod ジョニー・ロッド:Bass
Carmine Appice カーマイン・アピス:Drums
produced by – Paul Shortino and Pat Regan
Executive Producer – Carmine Appice