日出ずる国より、広き世界へ。かねてからのネオヴィジュアル系ムーヴメントや、海外におけるクールジャパン現象とあいまって、ここ数年は北米、南米、欧州、およびアジアなどでも日本のバンドが注目されていることは皆さんもご存知のことだろう。しかし、マーケットという土壌は耕し続けなければそれ以上の実りを生まない。 そこで、このたび起ち上がったのが[JROCK EVOLUTION 2012]なるプロジェクトである。国内の実力派バンドや、若手の有望株バンドが集結し、10月からシンガポール、ジャカルタ(インドネシア)、台北(台湾)でのイヴェントを行い、それを締め括るツアーファイナルが11月3日にお台場のZepp Tokyoにて行われたのだ。
午後2時という、ライヴとしては異例の開演時間だったにも関わらず、初っぱなから威勢良く狼煙をあげてくれたのは、今年で活動開始から5周年を迎えたダウトだった。彼ら流のジャポニズムを託した「MUSIC NIPPON」や、祭り囃子の風情をロックと融合させた「太刀風横丁」など、早々から盛り上げてみせる彼らの手腕はかなりのもので、楽しげに盛り上がる観衆の表情が何よりそのことを証明していたと言っていい。
「本日も全身全霊つとめさせて頂きます、ダウトです!」 真摯なエンターテイメント精神を感じさせるパフォーマンスが光った彼らは、11月14日に発売されるニューシングル「中距離恋愛」もいちはやく披露してくれたのだが、この続きは12月30日に代々木第二体育館にて行われる今年最後のワンマンライヴでも楽しむことが出来そうだ。
シンガポール、ジャカルタ、東京と[JROCK EVOLUTION 2012]では計3カ国への出演を果たしたユナイト。彼らは今回の出演バンド中で最もみずみずしさを持った若手ではあるが、昨年3月に始動してからというもの積極的な制作活動と、コンスタントなライヴ活動を地道に続けて来たことで、今日までにバンドとしての基礎力と応用力は共に必要なだけ培って来ている。 「今日は海外で学んだことを活かしながら皆に笑顔になって帰ってもらいたいので、どうか最後まで楽しんで行ってください」 その成果はこの場でもいかんなく発揮されており、フロントマン・結が語った言葉どおりのステージングが展開されたのである。ここは、12月5日に発表されるという待望のセカンドフルアルバム『MEANiNG』にも期待したい。
続く三番手となったSuGは、元来ポジティヴなスタンスが身上であるだけに、この日も実に前向き。先だって、12月29日に行われる代々木第二体育館でのワンマンをもって活動休止期間に入ることを表明した彼らではあるが、ヴォーカリスト・武瑠はハッキリ宣言してみせた。 「今日のライヴを最後に観てもらうとか、今日を良い思い出にするとか、一切思ってません。この瞬間にも皆をSuGファンにするような、攻めのライヴしかしないんで、お互い正面からぶつかり合おうぜ!」 ファンキーなリズムとソウルフルなメロディが、エッジーなバンドサウンドと三つ巴になった最新シングル曲「swee†oxic」で聴ける革新性からいっても、SuGがここまでのバンドだとは到底思えない。今度の活動休止は、SuGが新たなる一手を打つ為の充電期間だと信じることにしよう。
今秋、自身初の日比谷野外音楽堂公演を終えたばかりのギルガメッシュは、この日のステージでも胸のすくような熱いヤンチャぶりを発揮してくれた。 「爽やかなバンドや、キラキラした雰囲気のバンドが多い中で、突然こんな泥臭ぇバンドが出て来てしまって申し訳なく思っているんですけれども(笑)、俺らはここからラストに向けての起爆剤になろうと思います!」 マイクを持った左迅が先導者となっての破壊力満点な「斬鉄拳」や、ヘヴィブギー調の新曲「Bomb」、このイヴェントにこそ相応しい「evolution」と続けられた全9曲で、彼らはこの場を制圧するに至ったのだ。 来る12月1日には、公式サイト上にて来年に向けた[やれんのか!? 2013]についての詳細が発表されるそうなので、こちらも忘れずにチェックして頂きたい。
さて。いよいよ大詰めとなって来たファイナルステージにおいて、何時にも増して貫録ある存在感を放ってくれたのは、このツアーに参加するまであまり海外でのライヴを行ったことが無く、特にアジア圏での公演は初めて経験したというAlice Nineだ。 「今回ムックさんたちと一緒にアジアを廻ってみて、本当に音楽というのは垣根とか、いろいろなものをぶっ壊して行けるものなんだなと再確認しました」 歌い手であると同時にスポークスマンでもある将が発した言葉の頼もしさもさることながら、真っ向から生のバンドサウンドを主軸に勝負しようとする彼らの姿勢からも、そこはかとない力強さを感じたのは言うまでもない。12月31日に代々木第二体育館第にて予定されている初のカウントダウンライヴでも、間違いなくそんな彼らの勇姿を拝めることだろう。
百戦錬磨の雄、ここにあり。今回参加者中、最も海外公演経験が多いのはダントツでムックなのだが、数々の修羅場をくぐり抜けて来ている彼らの繰り出す音は、あたかも説得力の塊のようであった。バンドの看板である逹瑯をはじめとして、舞台上を縦横無尽に使い切る演者としての才覚にも特筆すべきものがあり、最終的にはワンマンライヴと見紛うような空間を彼らはそこに創り上げていたのである。 「[JROCK EVOLUTION 2012]は今日でファイナルだけど、実はこれが始まりなんじゃないの?いや、一部でそういう噂がまことしやかにささやかれているわけですよ。続きがあったら、皆また遊びに来てね!」 11月28日に発売予定のフルアルバム『シャングリラ』の仕上がりぶりも相当に秀逸なので、是非とも一聴することをおすすめしたい。
なお、今回のツアーファイナルでは最後の最後に全出演バンドからの選抜メンバー、および有志が集ってのセッションでLUNA SEAの「WISH」が演奏される一幕もあった。各種イヴェントの類いはいろいろあれども、「もっとシーンを活性化させ、日本独自の文化を世に広めて行きたい」という志を同じくしているバンドたちだからこそ、このようなレアなセッションが実現したとも言えそうだ。 そして、このプロジェクトは今後も継続し、来春には[JROCK EVOLUTION 2013]として大阪、台北、ジャカルタ、クアラルンプール(マレーシア)、バンコク(タイ)、東京にて開催されることも決定している。日出ずる国より、広き世界へと向けた誇り高き挑戦に終わりはない。
Text: 杉江 由紀
Photo: 緒車 寿一、森 久
JROCK EVOLUTION 2013 来春開催決定
開催地候補
東京、大阪、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ、台北