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赤い彗星の俺

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第十五回 「馬鹿野郎!良いもんは良いんだよ!The Brian Setzer Orchestra!」






ブライアン・セッツァーという男を一言で表すとするなら根っからのギター小僧である。

 金髪でバシッとキメたリーゼント、華やかでこの男しか着こなせないであろうギンギララメラメスーツに身を包み、武器はトレードマークのギター、グレッチの6120。ぶっとい両腕にはガッツリ気合いの入った入れ墨。この外見でこの両腕が奏でるギターのサウンドと言ったらもう痺れる!の一言に尽きる。ロックンロールに必要不可欠な「とろみ」を誘発させるギタープレイは卓越された彼だけのもの。しかもそれだけじゃない。超絶なギタープレイとノリノリのサウンドで圧倒させたその空間を、一瞬でハッと息を飲むぐらい変えてしまうしゃがれた歌声の粋なこと粋なこと!暴走にも似た彼のパワフルで華やかなステージは、もう体が勝手に動き出して踊らずにはいられない。会場の誰よりも一番楽しそうな彼は、ギターと思うがままに遊んでいる少年そのものなのだ。

 ブライアンセッツァーは米ニューヨーク州ロングアイランド生まれ。8歳のときにビートルズのジョージハリスンに憧れギターを始める。その後、スコッティームーア、クリフギャインハルト等のロカビリー系をはじめ、ジョーパス、ジャンゴラインハルト等のジャズギタリスト系からも影響を受ける。そして1979年、ハイスクール時代の友人、スリム・ジム・ファントムとリー・ロッカーと共に「ストレイ・キャッツ」を結成。シンプルなビートの上で踊る、ブルース、ビバップ、カントリーミュージックなどの要素を取り入れたギターとアップライトベース、溶け合った様な小粋なドラムスが奏でるサウンドは、あの80年代初頭に、ネオロカビリーという新たなジャンルを確立させてしまった、聞いて絶対損はないイカしたバンド。
このストレイ・キャッツが彼のキャリアのきっかけだった。彼らのサウンドは他人に有無を言わせないパワーと魅力に溢れていた。それは時代を超えた今も、ロカビリーファンに夢と希望を与え続けてくれている。そんななか、ブライアンは確立されていく人気とは裏腹に、生み出すサウンドに試行錯誤で埋もれていた為か、解散や再結成を何度も繰り返して活動も思う様に進まないでいた。しかし1992年頃、そんなブライアンを見かねてか、ホーン・プレイヤー達が家の近所のジャムセッションに彼を誘い出した。これがザ・ブライアン・セッツァー・オーケストラとしてのプロジェクト始動のきっかけとなった。

 このザ・ブライアン・セッツァー・オーケストラ、もう本当にあたしの好み爆発なのですよ!あのブライアンのギタープレイ&歌声が、ビッグバンドを従えてライヴだなんて!鬼に金棒やん!マニアにとっては鼻血もの!もう堪らんじゃないですか!



 オーケストラを引き連れて新たなサウンドで再起復活したブライアン。1st、2rdでのセールスは伸び悩んだものの、3rdアルバム「ダーティー・ブギ」では堰を切った様に大ブレイク。1999年のグラミー賞ではダブル・プラチナ・アルバムに輝く。最優秀ポップ・ヴォーカル・デュオ/グループ賞、最優秀ポップ・インストゥルメンタル賞を見事獲得する快挙を成し遂げ、一時全米ではスウィングが一大現象となった。今度はネオスウィングという新たなジャンルを創り上げたたブライアン、本当に凄いと思う。これだけ乱雑に量産され溢れ返る音楽産業の中で、たった一人のギター小僧が二つのジャンルを確立させてしまったのだから。

 ザ・ブライアン・セッツァー・オーケストラで活動する様になってから、彼のギタープレイも驚くほど磨きがかかった。ノリノリのロカビリースタイルから、ビッグバンドを携えた甘美で上品なジャズオーケストラバンドまで、幅広いジャンルを緻密にまとめあげるテクニックと能力は凄まじいものだと思う。それに伴い安定していくテクニックったら半端じゃない。ジャズ的なアプローチからカントリーチックなものまで幅広く、バッキングとシングルノートのソロを絶妙に混ぜ、縦横無尽に踊りまくるギタープレイには感嘆の溜め息。ダブルチョーキング全開の激しいロックンロールなソロ、テンションコード満載のジャジーなソロ、オクターブ奏法やアーミングも多様し、ジャズやロックなどジャンルに決してハマらないソロ、全てが彼の最高の魅力。要するに凄いエロいんですこの人のギター!大人で上品なんだけど不良少年な悪ガキソロ、格好良いなチクショー!あたしこういうの大好物なんですマジで!堪らん!古いも新しいもないんだよ!良いもんは良いんだよ!



 あたしは2rdの「ギタースリンガー」のアルバムが一番好き。一曲目の「Ghost Radio」を初めて聞いた時の感動が凄い。あたしもビッグバンドでライヴやりたいー!絶対やりたいー!このアルバムは終始飛ばしてる感じで、1枚聞いたらライブを堪能したぐらいお腹いっぱいになります。おもちゃ箱みたいに色んなジャンルやアクションがぎゅうぎゅう詰めになってて、曲が進むごとに「次はどんなん聞かせてくれるんやろか!」ってワクワクする。本当に豪華!ビッグバンドとブライアン、この化学反応恐るべし!

 ブレイクした3rdアルバム「ダーティー・ブギ」も素敵でかなり聞いた!前作よりもブライアンのソロが堪能できるのと、全体的にムードが大人になってるかも。でも暴れてるんです。何このやりたい放題!このアルバムに収録されている「You're The Boss」なんですが、なんとあのグウェン・ステファニーとのデュエット曲なんです。もうね、本間に二人とも雰囲気が凄い!二人の笑いながらの掛け合いもあって、両ファンには堪らない一曲です!堪らないといえばもうひとつ、彼がカヴァーしてました、クイーンの名曲「CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE」も必聴!彼の味が発揮されていて愛を感じます。面白いです!

 そしてそして面白いといえばブライアンのこのアルバム、「ウルフギャングズ・ビッグ・ナイト・アウト」クラシックの名曲の数々を、ブライアントオーケストラがカバーしたアルバムなのです!クラシックを日頃あまり聞かないあたしでも知っているような馴染みの曲が多いんですが、見事にブライアン・セッツァー流のアレンジになってます、暴れてます。これは聞いていて本当に面白かった!今までに聞いた事無い様なアクションを聞かせてくれるブライアンのギターは、新たな挑戦を楽しみながら飛び越えているように聞こえた。常に面白く、常に新しい事をしようという、遊び心とプロ根性がガツンと伝わってくる。クラシックファンも楽しめる一枚になっています。是非!

 どんなに時代が変わっても、彼は流行り廃りなんか全く無視して、自分の格好良いと思う事を誰よりも楽しんでやっている。だから格好良いんです。

自分のスタイルを貫くその揺るぎない信念こそが、音楽というものではないか。そう信じています。

逢瀬アキラ



2012年07月23日 20:45




  • 大阪出身のシンガーソングライター。幼い頃から文章を書くことに慣れ親しみ、 自分なりのスタンスで音楽活動を続けて来た彼女の詩は、聴く者に媚びず、だが突き放しもしない。 その絶妙な距離感を自然に生み出す独特な感性を持つ。 2011年末、その独自の詩の世界を、現代的なアレンジに乗せて、新たな領域に踏み出す。
    逢瀬アキラ 公式ホームページ: http://vandalism-red.com/




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