5月26日~27日、“20th L’Anniversary WORLD TOUR 2012 THE FINAL”の追加公演が、東京国立競技場で開催された。ここは1958年、東京オリンピックのために設立された歴史の深いスタジアムであり、ライヴで同会場が使用されるのは史上4組目、バンドとしては初の快挙となる。2日間で計11万人もの観衆が、日本を代表する国際的なスポーツの聖地に動員されることとなった。
逆ピラミッド型やキューブ型のLED、球体のオブジェが配置された巨大なステージ上。フィールドの左右いっぱいにまで伸びた花道は、100m以上はあろうかという特大スケール。ステージを見ただけで、いかにこの凱旋公演が破格の規模で行われているかがわかる。
開演時間を少し過ぎた頃、突如LEDスクリーンに映し出されたのは『LCN』ワールドニュースなる報道番組だった。「UFOの目撃情報は止まるところを知りません」。ニュースキャスターは、3月3日、香港に初めて出現した逆ピラミッド型の未確認飛行物体が、その後、世界各国で目撃されていることを伝える。「まるで世界をツアーしているかのようです」とアナウンスしたところで、「東京代々木上空でUFOが確認された!」との速報が飛び込んだ。その模様を中継するヘリ。現場レポーターがUFOに浮かび上がる文字を1つ1つ読み上げる。
「L、A、R、C……L’Arc~en~Ciel!?」
直後、逆ピラミッド型UFOがステージ上に降臨。会場上空にはレポーターが乗っていると思われるヘリも通過。これには客席も大声援で応える。激しい雷鳴が場内に轟き、花火が打ち上がると、マーチングバンドとチアリーディングに続いて、フロートに乗ったメンバーが登場。さながらオリンピックの開幕を思わせるような一大パレードはフィールド外周を行進、アリーナ後方で停止した。同時に、スタンド最上段の聖火台に火が灯される。聖火台の横にはツアーで訪れた世界各国の国旗と並んで、“20th L’Anniversary WORLD TOUR 2012”のフラッグが高々と掲揚されていた。
オープニングからして、スペクタクル巨編と呼びたいほどのセレモニーが繰り広げられた国立競技場。ワールドツアーのファイナルにして、アニバーサリーイヤーを締めくくるステージが、いったいどんなものになるのか。もはや先の読めない展開と、なにが起こるかわからない緊張感に、場内は暴発寸前。
「ARE YOU FUCKIN’ READY?」
この言葉を合図に、スタジアム中から歓声が一斉にステージへ流れ出した。それをはじき飛ばすようにyukihiroのビートが加速する。1曲目は「READY STEADY GO」だ。のっけからkenとtetsuyaは左右の花道へ踊り出て、客席を煽る。「GOOD LUCK MY WAY」「REVELATION」「HEAVEN’S DRIVE」「Vivid Colors」と、アッパーチューンを連発。新宿の高層ビル群を臨む、高く広く組まれたステージセットを飛ぶように駆けるhydeの歌声。上空に際限のない空間は、4人が放射する強いエネルギーで一気に熱帯と化したようだった。
「ただいま東京! 今日はめっちゃ楽しみにしてた。だってパーティーだからね。20年歩んできた(アニバーサリーイヤーの)最後を、みんなで一緒にパッと盛り上げようぜ!」hydeのMC通り、ここはまさに盛大なパーティー会場。続くナンバーは、コアファンにはたまらない「In the Air」「風の行方」だった。この日のライヴは、誰もが盛り上がらずにはいられない集大成的な選曲。
「Driver’s High」「Caress of Venus」といった華やかなナンバーでは、特大花火の連発や前述のチアリーディングがステージをカラフルに彩る。その直後、チアリーダー(世界2位の実力者たち!)が周囲を取り囲んで行われたkenのMCは、「SEVENTH HEAVEN」イントロのリズムに乗せたラップ調の語り&煽りで、会場全体が大いに沸いた。
迎えたライヴ後半、tetsuyaのベースソロが鳴り響く。となればあの曲が続く……と思いきや、演奏されたのは「C’est La Vie」だった。予期せぬ展開に客席からは悲鳴にも似た叫声が聞こえる。そして会場内の気温が一気に高まるほどの火柱が上がった「Shout at the Devil」。そのエンディングでは、yukihiroのクールさと過激さを合わせたドラムソロが会場の熱気をさらに上昇させた。
場内の照明が落とされたインターバルでは、客席一面のサイリュームが星空を描く中、アリーナ最後方で突然数台のカメラのフラッシュが一斉に焚かれる。するとそこにメンバーが突然姿を現すサプライズが! 設営されたサブステージに上がったhydeは、「あなたたちキレイよ。そんな感じの曲、やっちゃっていいかな」と、「Pieces」を披露。サイリュームの星空シチュエーションと、メインステージのミラーボールが幾重にも光を放ち、楽曲をより感動的でドラマティックなものにした。
何本ものレーザー光線が夜空に広がった「NEO UNIVERSE」、LEDスクリーンの映像や照明の豪華絢爛な演出が楽曲の持つハイブリッドなスピード感を増幅させた「CHASE」などが続けざまに演奏された怒濤のステージ。ラストナンバーの「虹」を前に、「自由気ままなバンドなんでね。難しいバンドだと思うんですけど、ここまで来れたっていうのは、きっと、これが正しいんじゃないかと僕は思うんですよね。ありがとう!」と語ったhyde。LEDスクリーンには球状の虹模様が映し出され、エンディングには虹色の花火を連発。盛大で壮大な初日の幕を閉じた。
そして2日目。会場は、大きな期待感で熱を帯び、その熱気は野外ながらもライヴハウスと同等の濃度の高さで、いやがおうにも興奮を煽る。全世界45万人を動員した大規模ツアーとなっても、L’Arc~en~Cielが作る空間はドラマティックに、刺激的に、1人1人の心を揺さぶり、その核にはいつでも楽曲がある。初日のレポートで記したように、満場の大観衆をワクワクさせるアミューズメントパークのような一大エンターテイメントショウは、4人のコンポーザーが作り出すバラエティに富んだ楽曲の数々があってこそ初めて成せる演出である、ということができるのではないだろうか。
たとえば、両日共に披露された「MY HEART DRAWS A DREAM」の導入部ではkenのギターソロがクローズアップされる。深く悲しみを帯びた音色は、やがて全てを浄化するように輝かしい同曲のテーマフレーズへと移り変わる。LEDスクリーンの映像はそれとリンクして、荒廃した大地に満
開の花を咲かせる、復興の物語が描かれていた。また、真っ暗なステージにかがり火が焚かれた「いばらの涙」。その小さな火の中で、祈りにも似た渾身の熱演が繰り広げられる……といった具合に、華やかさを演出するド派手な特殊効果とはまた違った、心の奥底に訴えかけるような楽曲と演出が、驚嘆の溜息と感動を叫ばせるのだ。
開の花を咲かせる、復興の物語が描かれていた。また、真っ暗なステージにかがり火が焚かれた「いばらの涙」。その小さな火の中で、祈りにも似た渾身の熱演が繰り広げられる……といった具合に、華やかさを演出するド派手な特殊効果とはまた違った、心の奥底に訴えかけるような楽曲と演出が、驚嘆の溜息と感動を叫ばせるのだ。
もちろん、この日のライヴも序盤からアクセル全開。初日に演奏された過去の人気曲は、「flower」「夏の憂鬱[time to say good-bye]」「the Fourth Avenue Cafe」といったナンバーが新たに選曲されて、二日間通して参加したファンには嬉しいセットリストとなっていた。
最初のMCで、客席と息の合ったコール&レスポンスをみせたhyde。
「とうとう今日っていう日が来ちゃった。今日は最後の最後なので、思いっ切りいっちゃって。今日は祭りやから、パッと行こうぜ!」と、アニバーサリーイヤーのファイナルを盛り上げた。また、初日にラップ調のMCを披露したkenは、この日はバージョンチェンジ。「ずいぶんギターを弾きました。みんなも随分曲を聴きましたね。そろそろ踊れる?踊れんのか国立!」と、ステージ上、一直線に並んだチアリーダーに混じって、一糸乱れぬダンスを披露するという場面も!
そしてやはり、バンドの演奏力は圧巻のひとことに尽きる。hydeがギターを手にした「HONEY」では強烈にドライヴするバンドサウンドがこの上ない高揚感を築き、静かに淡々と、しかし壮大に展開する「In the Air」ようなナンバーでは一点の曇りもないサウンドが眩しい輝きを放つ。サブステージで披露された「あなた」「winter fall」は初日同様、感動が場内いっぱいに広がる演奏。スタンド席からは、yukihiroのプレイをセットの内側から見ることができたという、レア体験があったことを書き加えておこう。さらには「NEO UNIVERSE」。kenはギターをピッキングしないシンセ的なアプローチ、yukihiroはビートの要であるスネアを最後の一発しか叩かないリズムを構築、tetsuyaは6弦ベースでメロディーを縦横無尽に奏でるといった、列記するだけでもアクロバットなアンサンブルを実にさりげなくポップに響かせるあたりは、L’Arc~en~Cielだからこそ成せる業なのである。
夜空に月が煌々と輝く頃、この夜のテンションも最高潮を迎えた。ラストナンバーは「虹」。その前にhydeはこう話した。「世界中を廻って感じたのは、人種も宗教も違うんですけど、みんな表情は同じなんですよね。嬉しくて泣いてる子もいるし、笑顔の子もいる、今日のみんなも一緒なんですよ。スタッフとかすごく大変だったと思うけど、世界中のみんなの心に残るライヴができたんじゃないかなと思います。これからまだ続くと思うんで、L’Arc~en~Cielを応援してください。また遊ぼうぜ!」。
1年間にわたる“20th L’Anniversary”は、“20th L’Anniversary LIVE”(味の素スタジアム2Days)と全国5都市のアリーナ/ドームを廻った国内ツアー“20th L’Anniversary TOUR”を間に挟んで、3枚のシングル、1枚のフルアルバムをリリース。そして、全10カ国14都市17公演を廻った“20th L’Anniversary WORLD TOUR”は5月31日のハワイ ホノルルを最終公演に大団円を迎える。空前絶後のスケールで、あまりにも刺激的に駆け抜けたアニバーサリーイヤー。全ての演奏が終了した後、大空へ放たれた50,000個の虹色バルーンと1,000発もの虹色花火は、それを祝福するようにどこまでも高く舞い上がる。そしていつまでも鳴り止まぬ拍手の中、L’Arc~en~Cielは、この1年の旅を終えた。「20年経って、ワールドツアーとかやってみて、自分たちにとってもすごく歴史に刻まれる一年になったと思います」とはhydeの弁。日本の音楽史、そしてあなたの心にも鮮烈な記憶として残ることだろう。
最後に、巨大スクリーンに映し出されたのはL’Arc~en~Cielの今後。この2日間の公演の模様が、7月22日(日)21:00~ WOWOWにて独占放送されることが決定した。また6月9日~7月8日までの1ヶ月間、“L’Arc~en~Ciel 20th L’Anniversary EXHIBITION”と題した美術展が、横須賀美術館で開催される。
さらには、すでに発表されているように東京 国立競技場公演の開演前SEとして流れていた『L’Arc~en~Ciel Tribute』を6月13日にリリース。このアルバムは世界各国から豪華アーティストが集結。ボーナストラックとして、日本人アーティストも参加している。そして同日、これまでのライヴアクトの中から20曲を厳選した初のライヴベストDVD『LIVE TWENITY』も発表される。
なお、『NEXT WORLD TOUR』なるVoter Registration企画が発表された。これはL’Arc~en~Cielの次なるワールドツアー開催都市を投票で決定するというもの。ハワイ公演終了後、オフィシャルサイトでスタートする!
L’Arc~en~Ciel オフィシャルサイト