名うての猛者が結集し、この10年というものモダンかつグラマラスな轟音を放ち続けて来たBUGが、活動休止期間突入を前に披露してくれたのは、未来への掛け橋となるような最高のライヴパフォーマンスであった。
公式サイト上にて、〈今年は10周年という節目の年でもあり、ここで一度4人それぞれがBUGに向けていた視線を外し、それぞれ別の視線で色々なモノを見る事が必要な時期にきた〉と、突然の重大発表があったのは11月に入ってすぐのことだったろうか。彼らはそれ以前の今年3月から、[BUG 10th ANNIVERSARY Turn around & Count to 10]という、文字通り10周年にちなんだ10回に渡るシリーズライヴを行って来ていたのだが、結果的にはそのファイナルを飾ったこの夜の渋谷・CHELSEA HOTEL公演が、活動休止前のラストライヴとなってしまったかたちである。
もっとも、そこは筋金入りのロックバンドたるBUGのこと。ヘンにお涙頂戴的な湿っぽい雰囲気はまるで皆無なまま、終始ライヴは小気味よく進行して行く。フロントマン・kyoが聴衆を扇動するようなヴォーカリゼイションで魅了した「So CRAZY」はもちろんのこと、5弦ベースの低音をTAKASHIがエロティックに響かせた「NASTY」や、Takeshiのドラミングが曲に独特のグルーヴを与えていた「Romantic Teardrops」、そしてセンスフルなフレージングと魂のこもったプレイでASAKIがギターを鳴かせていた「I Miss You」など、どの曲も受け手側の心身を直撃し、テンションを爆上げしていたことは間違いない。真冬だというのに刻々と場内の温度が上がって行ったことからも、その事実は証明出来るのではなかろうか?
また、アンコールにてBUGにとっての初心を詰め込んだ「NEW WORLD」という、長年ずっとライヴで大事にされて来た楽曲が演奏された際には、オーディエンスがサビの歌詞を大合唱するという一幕もあった。しかも、このアンコールが終わっても集ったファン=BUG MANIAたちは「We want BUG!」と、ひたすらに熱烈なコールをステージへと向けて送り続け、遂には予定外のダブルアンコールが実現することに!
「皆、今日は本当にありがとう。せっかくだから、もうちょっとやるか!ウダウダ話をしていてもしょうがないので(笑)、ここはBUGらしくグチャグチャになって今夜は終わりにしたいと思います。また会いましょう、BUG MANIAの皆さん!!」(kyo)
ここに来て演奏されたのは、ある意味これからの彼らのことを示唆しているかのような「Set me free」。もっと自由に、もっと視野を拡げた上で、その先に何が見えるのか…。彼らは、きっと何時か来るであろう復活の日まで、それを追及していくことになるのではないかと推測する。
なお、来春には2枚目のベストアルバムとなる『BUGKILLERⅡ』とライヴDVDのリリースが予定されているそうだ。まずはそのふたつのアイテムで“これまでの”BUGを堪能して頂き、BUGの“ここから”については4人の健闘を祈りつつ、今はしばし次なる新世界の到来を待つとしよう。
Text: 杉江由紀