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44MAGNUM、鹿鳴館。過去と現在が交錯する幻想の舞台。





 2011年6月25日、目黒鹿鳴館。44MAGNUMの「POINT IS AREA44」ツアーファイナルが行われた。2月の新宿からスタートしたこのツアー。3月の東日本大震災により、ファイナルを含む 2公演が延期されたが、この日 44MAGNUMは鹿鳴館に帰ってきた。鹿鳴館で 44MAGNUM。この響きだけで血が騒ぐ人は少なくないだろう。記録によると前回の鹿鳴館ライヴは 1984年12月31日。まさに四半世紀ぶりの登場となる。44MAGNUMと会場に集まったファンは、この日ここで何を体験し、何を共有するのか。

 大きなホールとは違い、ステージは手の届く距離の鹿鳴館。それでも観客は少しでも前で観たい、接したいという思いからか、開場直後から既に満員の観客で埋め尽くされていた。そしてステージが暗転、44MAGNUMライヴの始まりを告げる Mötley Crüeの Live Wireが流れ始めると、会場は大きな声援と拳を上げ、登場への渇望を抑えきれない。続く ETのテーマとともについにメンバーが登場。真っ先に登場した STEVIEが会場に向かって叫ぶ。続いて会場を煽る PAUL。この時点で会場の熱気は急上昇。声援と叫びが会場に充満し、ついに最初の一音が鹿鳴館に響いた。「NO STANDING STILL」。



 JIMMYの攻撃的なギターから始まるイントロが流れた瞬間、観客の渇望は爆発した。この日の JIMMYはトレードマークとも言えるフライングVではなく、 2本のレスポールを従えてステージに向かっていた。黒のレスポールで激しくリフを奏でるクールな姿は、変わらない憧れのギタリストであった。PAULと STEVIEのツインヴォーカルも冴える。前に出てグイグイとステージを引っ張る STEVIE。裏メロそしてメインと、身体全体を使って会場と対峙する PAUL。そしてその姿からほとばしる「魂」。その姿からは、全てを懸けることの美しさも感じ取れる。そして、JOEのツーバスが身体を貫く。ある時は重く激しく、ある時はたたみかけるように楽曲を引っ張る JOEのドラム。結成以来、JOEの作り出すグルーヴが 44MAGNUMの礎であることに変わりはない。ベース・RAYは激しく頭を振る。そのステージングは、44MAGNUMの持つカミソリのような鋭さを体現する激情溢れるスタイルである。この 1曲で、既に鹿鳴館は 44MAGNUMの世界に染まった。間髪を入れずに「YOUR HEART」へ。

 JOEの作り出す心地よいリズムに、JIMMYがクールな出で立ちで激情のギターソロを繰り出す。最後にスウィープを入れ、ソロが終わるその瞬間、JIMMYは会場に向かって見栄を切る。その姿は歌舞伎役者にも通じる完成された美しさ。会場を圧倒していた。そして 3曲目の「SOULS」、PAULと STEVIEが素晴らしいコンビネーションを魅せる。早くも会場は熱気で覆いつくされ、空気が薄くなりつつあった。ここで PAULがこのライヴ初めてのMC。






「久しぶりだな TOKIOーーー! みんな元気でやってたかーーー!」


 この時、全身に衝撃が走った。昔観ていた、聴いていたあの言葉、あの声そのままだった。記憶が過去に引き戻される。しかし目の前には現在の 44MAGNUM。二つの感覚が交錯し、高ぶりを抑えることができなかった。PAULの呼びかけで、震災の被害者のために会場の全員で黙祷し、次の曲へとなだれ込む。

 ギタリスト・JIMMY。数々のフォロワーを生み出してきたそのロックスター然たる立ち居振る舞いは、全く変わっていない。そして PAULは全身の力を振り絞り、ハイトーンのシャウトをし、頭を振りながら観客と対峙している。しかし、当然ながらそれは苦しんでいるのではなく、それを楽しんでいるであろうことは、その姿から見てとれる。観客もそれが分かるが故に、さらにヒートアップしていく。このすさまじいスパイラルによって、鹿鳴館の酸素は徐々に失われていった。思い出深い 1stアルバムの曲「I'M ON FIRE」では、JIMMYの激しいソロを奏でる姿が観客の目を奪う。そしてサビでは会場と掛け合いをするシーンも。2度目のMCで PAULが一言。


「楽しいぞこのやろう・・・」




 この時既に、会場の酸素が相当薄くなっていることを自分も感じていた。その息苦しさは、どこか懐かしくもある。しかし、ステージで激しい演奏をするメンバーにとって、それは戦いでもある。それが鹿鳴館の宿命であり試練でもある。そんな中 PAULは、「ここにいる皆がいてくれるから、こんなに楽しい気持ちになれる。そんな皆にこの曲をプレゼントします」 そして始まった「YOU LOVE ME DON'T YOU?」。PAULのソウルフルな歌声が響き、会場も一身にそれを受け止めていた。そしてさらに楽曲をたたみ掛ける 44MAGNUM。メンバーも観客も、この瞬間をこの楽しさを一瞬たりとも逃したくない、そんな気持ちが会場中から見てとれた。そしてライヴも終盤、「まだイケるのかーーー!!」と煽り、ハイスピードチューンの「HIGH SCHOOL UPROAR」、「TOO LATE TO HIDE」が炸裂。「TOO LATE TOO HIDE」では、フロントマン PAULが 16分のヘッドバンギングを見せる。そう、これがこの曲の作法。これが 44MAGNUM。酸欠の中、必死に頭を振る PAUL。観客の期待、それに応えたい。その姿から、その気持ちが、その思いが、心に突き刺さった圧巻のステージであった。そんな空気の中、ステージと会場は一体となり、観客もその瞬間の全てに身体を委ねていた。

 本編が終了しても、会場の熱気は上がる一方。熱狂とも言えるアンコールに応え、メンバーが登場する。PAULが一言。


「懐かしいよな・・・酸欠」


 鹿鳴館のライヴで酸欠。久しぶりに味わう懐かしい響き。会場のコールに応えてJOEも一言。「鹿鳴館でやるのは 20年ぶり。酸欠も久しぶり」。そして JIMMYも「酸欠で何やってるかわかんなくなった」。これが鹿鳴館の洗礼か。ここで PAULがメンバー、会場にゲキを飛ばす。


「酸欠なんて言ってらんねーからな! ぶっとばしていくぞ!」


とアンコールに突入する。そして最後の最後、「とっておきのやつ・・・やってないよな!」で始まった「SATISFACTION」。お馴染みの掛け合いでは、PAULが若いメンバーであるRAYにマイクを向け、コールを促す。PAULの粋な計らい。現代のこの日に SATISFACTIONの掛け合いができる。それは  44MAGNUMという存在と、それを支えて会場に集まった観客がいてこそ実現できる夢でもある。この日は、鹿鳴館に集結した全員がそれを体感できた、まさに夢の一夜であった。




 44MAGNUMは多くの人に記憶を植え付けてきた。それぞれが 44MAGNUMに、その楽曲に思いを重ねている。そして彼らは現在もその思いと記憶を創造し続けている。あなたはどんな思いを彼らに重ねているだろうか。それはまぎれもなく、あなたの人生の一部である。そしてそれこそが、44MAGNUMが存在する理由と言っても過言ではないだろう。
Photo: 西槙太一
Text: 大泉 繁







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2011.6.25
44MAGNUM「POINT IS AREA44」TOUR
目黒鹿鳴館

1. NO STANDING STILL
2. YOUR HEART
3. SOULS
4. STILL ALIVE
5. I GIVE YOU MY LOVE
6. I'M ON FIRE
7. YOU LOVE ME, DON'T YOU?
8. TOO BAD
9. I'M LONELY MAN
10. SURRENDER
11. HIGH SCHOOL UPROAR
12. TOO LATE TO HIDE
(EN1)
1. IN THE END
2. STREET ROCK'N ROLLER
(EN2)
1. TAKE ME TO YOUR HEART
2. SATISFACTION
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44MAGNUMオフィシャルサイト





2011年07月18日 18:44