
2025年6月22日、ガールズバンド「きみとバンド」による「5th anniversary tour 2025 〜きみとZepp〜」福岡公演が開催された。5大都市の Zeppを制覇するこのツアーは、インディーズ・ガールズバンドでは初の快挙となる。この日のライブでは、ツアーに込めた彼女達の想いと夢が詰まった新たな世界を見せてくれた。
会場にはツアーの始まりを祝うべく、きみとバンドのファンである「きみ」達が大勢駆けつけた。会場が暗転し、SEが流れ始めると「きみ」達は、ライブへの期待を込めて声を上げ、手拍子を打ち続ける。メンバーの登場に合わせて歓声を上げ、その期待はどんどん高まっていく。
1曲目は「こいごころ」。待ちに待った期待を爆発させ、身体を揺らし、手拍子を続ける会場。ステージ上のメンバーは笑顔で会場を見つめながら、その期待を現実化するが如くファンと向かい合う。夏らしくブルーを基調とした新衣装に身を包む彼女達のステージングは、会場の想いを一点に集め、きみとバンドの世界を作り上げていく。
会場を優しく見つめながら、きみとバンドの柱を作る Dr.大野真依。先日、Pearl Drums公式アーティストとしての認定を受け、また一つアーティストとしての階段を上った彼女。一見淡々と演奏をしているようにも見えるが、実はリズムのキープ力が非常に高い。そのことが、きみとバンドの演奏を安心して聴くことができる一つの要素にもなっている。そしてライブでの演奏を観るのは昨年3月の大阪公演以来となった Ba.ゆきたん。彼女が最も大きな進化を遂げていた。この日のステージングは余裕。足でリズムを刻み、メンバーや会場を見つめながら確実な演奏を続ける。ベースをかまえる姿も堂々としたベーシストに成長していた。そして元気印の Gt.Vo.清原梨央。この日も飛んで跳ねて、会場の空気を引っ張るきみとバンドのムードメーカー。しかしその裏では、しっかりした細やかな演奏と同時にリードVo.&コーラスをこなす。実はこれらを両立するのは、想像よりも難易度が高いことを付け加えておく。そしてバンドのフロントパーソン Gt.pf.Vo.森田理紗子。ヴォーカル、ピアノ、そして作詞も手掛ける実力派シンガー。他の一面では、SNS等で見せる面白キャラがだいぶクセになる(褒め言葉です)。最近はライブでもそのキャラが見え隠れするようになり、そんな自然体の森田理紗子も魅力的である。




メンバーの個性がこれだけ異なることもきみとバンドの魅力の一つ。そんな彼女達が心を一つにして臨むバンドとしてのステージは、4人それぞれの力を足した以上の「バンドの力」を感じさせるステージになっている。バンドっていいなと思わせてくれる、そんな魅力をぜひ多くの人に感じて欲しいバンドである。
4人のパフォーマンスで、会場はどんどんときみとバンド色に染まっていく。続く「スローモーション」で熱気はさらに上昇。会場は腕を振り上げ、大きな歓声でステージに向かう。
「あらためまして、きみとバンドです! よろしくーー!!」
「Zeppツアー、スタートしましたーーーーー!!」
「今回のツアーでは、バンドだけじゃなくパフォーマンスもさせていただきますので、ここから Zepp Hanedaまで成長していく姿を見守ってもらえたらなと思います!」

清原梨央が意気込みを語り、ライブは続く。「はなればなれ」、「rosemary」と、きみとバンドのメランコリックな世界を届け、ここで大野真依が MCをとる。
「今日は 5大都市ツアー初日福岡、来ていただきありがとうございます!」
ここで Pearl Drums公式アーティストとして今回から使用しているドラムセットのお披露目。
「色々ドラムを試奏させてもらって、この音がいいって決めたんですけど、このピンクの色は元々は無くて、特注でピンクにしていただいたんです」
「が!」
「私がこうやって公式アーティストになれるのも、自分の力じゃなくてみんなのおかげで、きみとバンドっていう看板があるからこういう風になれてると思っています。これからも頑張っていきたいと思います!」
会場からは大きな大きな拍手。
「今日はこの音で、盛り上げていこうと思いますが」
「皆さんもっと行けますか?」 (静かに静かに煽る大野真依)
それに対して大音量で「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」と返す会場。うん、正解です(褒め言葉です)。

次の曲は「ユメコイ」。切ない森田理紗子のヴォーカルと、エモい清原梨央のギターソロが光る。続けてしっとりと「さよならリフレイン」。そしてここから 新たな展開を見せる。

「ありがとうございます! ここからはお待ちかねの『be free』セクションに入っていきます! New EPの『be free』は全4曲、それぞれパフォーマンスも曲調も全く違った物になっているので、きみとバンドの強みである『振り幅』を楽しんでいただけたらと思います!」
そして「KISS」へ。大人っぽい曲調でヴォーカルを取る森田理紗子、そして大野真依、清原梨央、ゆきたんはサイドでダンスを披露する。曲調に合わせたセクシーなダンスをキレッキレで魅せる 3人。歌とダンスでも魅せるバンド、というのもなかなかに新しいスタイル。


続いては MVも公開していた「ヲタロック」。作詞はお馴染みのプロデューサー「会長ですが。」さん。この MVは、執筆時点ではなんと公開から 2週間で再生数 44万回を超えるという記録を叩き出している。さらには JOYSOUNDで MV付きのカラオケが配信されているため、こっそりと練習することもできる。さて、この曲はステージと会場双方で作る楽曲、振り付けのレクチャーをした後いよいよ本編。彼女達は 4人ともお立ち台に上がり、「いざヲタロック!」の歌詞と共に、ステージ、会場ともにジャンプ! 会場の「きみ」(ヲタク)達は準備万端。キレッキレのヲタクパワーで、全力で楽しむ姿はまさにヲタクの鑑(褒め言葉です)。
「ヲタクってサイコーーーー!!」
「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!」



KISSからヲタロックという特大の振り幅の後だが、ここからさらに振っていくスタイル。次の曲は「祝-iwai-」だが、ステージでは「きみとバンド法被(はっぴ)」を来たメンバーが、会場に餅を撒くというさらに斜め上の展開に。この曲では、4人全員が扇子を持ちながらダンス、そしてお立ち台から餅を撒く、一見カオスな展開にも見えるが、それすらも計算通り。気持ちを切り替えて自由になったメンバーが、笑顔で餅を撒き、「きみ」達は必死に餅をゲットしようと奮闘する。これがエンターテインメントだ。これが「きみとバンド」だ。



会場全体で楽しんだ後、メンバー 3人がステージを去り、森田理紗子だけが残される。
「渡されたセトリで、ここ『理紗子漫談』って書いてあったんですよね・・・」
ここで森田理紗子から漫談を一節。内容はライブに来場した方に留めるとして、その結果は・・・「そこそこウケてました」(※Youtube shortより) はたして他会場でも漫談は聞けるのか!? ぜひ会場で確かめて欲しい(切実)。
そして「be free」収録曲の残り 1曲「キミコネクト」を披露。この曲は王道のバンド曲で作詞は森田理紗子。この曲がまたガッチリはまるロック曲で、きみとバンドの「バンド感」が一段と映える良曲。ドラム、ベース、ギター、ヴォーカル、コーラスが縦横無尽に絡み合い、心地よいグルーヴを作り出す。私見ではあるが、きみとバンドは、ハード目の楽曲になるほど、この「バンド感」が強まる気がする。さらにヘヴィな楽曲を演ったらどうなるのかな、という妄想が膨らむ。
文字通り「be free」なパフォーマンスを見せてくれた彼女達。自由に楽しく、その楽しさは確実に見る人にも伝わるであろう。そんな新たな展開、振り幅を楽しみ、さらにその先にはもっと新しい展開が待っているかもしれない。そんな期待無限大のきみとバンド、これからも楽しみである。

本編はここであと 2曲。恒例の清原梨央の煽りが炸裂。
「福岡、まだまだ盛り上がっていけますかーーーーー!!?」
「もっともっと声出せますかーーーーーー!!?」
「恋のモンスター」。会場と共に楽しむ定番のジャンプ曲。ステージ、会場全員で曲に合わせてジャンプジャンプ! ラストはこちらも定番の「∞YAKEN」。「きみ」達も悔いを残さぬよう、全力で腕を振り上げ、声を出して全身でライブを楽しんでいた。
ここで本編が終了。即座にアンコールがかかる。
「アンコールありがとうございます!!」
リーダー・大野真依が会場のファンに向けて語る。
「今回のツアーは 5周年を記念したツアーで、5年間あっという間で色々あったんですけど、ここ 2~3年は、どうするべきなのかとか、バンドとは?とか、正解はないんですけど行き詰まってた時もあって、色々模索していました」
「で、ある日突然会長が『餅撒きしよう!』って言ってきたんですね」
「そう言われて、やっていいのかな?とか、バンドって、って思ったんですけど、素直に楽しそうだなって、みんなも楽しんでくれるかなって思って、今回こういう挑戦というか、パフォーマンスを入れてやることにしました」
「きみとバンドの強みは、次何があるんだろう? どんなことするんだろう?っていうのが強みだと思うので、これからもその武器を持って頑張っていきたいと思います!」

曲は「Midnight Scream」。これもまた彼女達の「バンド感」が出る良曲。会場の熱気もグングンと上がっていく。演奏、ヴォーカルのパワーで押す、ライブ曲としては相当に映える良曲。続けて「So High!」。この曲も最後を飾るに相応しいハードな盛り上げ曲。熱気はさらに上がり、惜しみながらラストを迎える。
「ありがとうございます! 本当にバンドっていいなって今日はすごく思えたし、今日はバンド以外のこともさせてもらったし、感想をぜひ SNSに上げてもらって、それをきっかけに足を運んでくれる方もいると思うので、みんなからも声を届けてくれたらなと思います!」
「今日のライブを通しても感じたんですけど、やっぱりきみとバンドは、『きみ』とみんなと作り上げていくバンドだなっていうのを、すごく感じました。これが始まりなので、この先もこの大きいバンドワゴンに一緒に乗って、夢を追いかけてくれたら嬉しいです。これからもついてきてください!!」
ラストは「きみとバンド」。ラストにこの曲はエモいという声もあった彼女達の代表曲。「きみ」への想いを伝えるために歌い続ける彼女達。その想いを全身で受け止めるべく、ステージに向かい合う会場。様々な想いが充満する空間に身をまかせ、この日の体験を噛みしめていた。

きみとバンド Zeppツアー 福岡公演が終了した。ついに始まった 5大都市 Zeppツアー。バンドという固定概念を打ち破り、様々な挑戦をするツアーにもなる。元々、音楽は自由なものであり、エンターテインメントも自由なもの。どこかの枠に囚われず、「きみとバンド」というスタイルを作り、何よりも見る人を楽しませれば、それが一つの正解になるはず。そんな挑戦を続ける、そしてファンを楽しませるべく進んでいく「きみとバンド」。ファイナル Zepp Hanedaに立つ彼女達の雄姿を楽しみにして、ツアーの様子を見届けていこうと思う。
Photo: 熊 博之
Text: 大泉 繁
きみとバンド
「5th anniversary tour 2025 〜きみとZepp〜」福岡公演
2025.06.22 Zepp Fukuoka
01.こいごころ
02.スローモーション
03.はなればなれ
04.rosemary
05.ユメコイ
06.さよならリフレイン
07.ヲタロック
08.キミコネクト
09.KISS
10.祝-iwai-
11.恋のモンスター
12.∞YAKEN
Encore
01.Midnight Scream
02.So High!
03.きみとバンド
〇きみとバンド 5th anniversary tour 〜きみとZepp〜
チケット:http://l-tike.com/kimitoband/
Lコード(83583)
6/22(日) Zepp福岡
7/06(日) Zepp大阪Bayside
7/20(日) Zepp名古屋
8/03(日) Zepp札幌
8/17(日) Zepp羽田(東京FINAL)
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